何度でもあなたをつかまえる
「……尾崎のこと、かほりちゃんのことを話し合ってるとね……共感し合うことが多くて……ん~、親友って感じ?……だと思う……。千歳さん、女性は懲り懲りらしいし。」

「それは……どうかしら……。」

かほりは、首を傾げたまま思案していた。


……うん。

驚いたけれど……確かに……いいかもしれない。

お兄さまは再婚しないって仰ってたけど……りう子さんなら安心して、お兄さまのことも、橘の家もお任せできる。

何より、りう子さんと義理の姉妹になれるのは、うれしいことだわ。


「……もし、りう子さんが……お嫌でなければ……、私、応援しますわ。お兄さまとのこと。」

かほりは真剣にそう言っていた。


自分を見つめるキラキラしたかほりの瞳を見て……りう子は複雑な気持ちを持て余した。

「……ありがとう……って言っていいのかな。あのね、本当に、そういうんじゃないの。何もないの。……なのに、かほりちゃんのお母さまも、やたら期待されていて……下にも置かない歓待ぶりなの。」

「母が?……まあ……。」

あのお母さまが、りう子さんを嫁にと望んでいるの?

信じられない話だ。

……失礼ながら、りう子さんは……少し裕福な普通のご家庭のお嬢さんで……お母さまの眼鏡に適う氏素性ではない。

しかもバツイチ……それも、前夫は雅人なのに……本当にお母さまが……。


それほどまでに、お兄さまとりう子さんがイイ雰囲気なのだろうか。



「かほりちゃん、お家には帰国のこと、伝えてないのよね?……今夜、お家に帰るのよね?……尾崎のところには……行かないほうが……」

りう子の言葉に、かほりはうなずいた。

雅人が、クラブのママの家にいるのか、それとも入籍したという中国人女性の部屋にいるのかは知らない。

どちらにしても、これまでのように単身乗り込むには躊躇する相手だ。

犯罪の片棒を担いでいるなら、法律の専門家に相談するべきかもしれない。

いずれにせよ……一時的に、雅人を奪還したところで、かほりはまだ半年、日本に居られない。

根本的な解決を得ないなら……下手に刺激する必要もないのかもしれない。

……頭ではわかってる。

でも、ね。
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