何度でもあなたをつかまえる
risoluto
risoluto~決然と
(リゾルート)
*.♪。★*・゜・*♪*.♪。★*・゜・*♪*.♪。★*・゜・*♪*.♪。★*・゜
「……弾いて。」
かほりが小声で雅人にそう指示したのを、代議士の東出先生……つまり指揮者の東出龍爾の妻は確かに見た。
……もちろん、声は聞こえない。
しかし、読唇術を学んだ東出夫人には、ハッキリと伝わってきた。
雅人もまた、ハッとしたようにうなずいて……カーテンを全開すると、まるでかほりにもたれかかるかのように寄り添って、ようやくギターをつま弾き、コーラスに参加した。
明らかに、茂木と一条はホッとしていた。
かほりもまた、安心して弾き上げた。
どちらからともなく自然にほほ笑みを交わす……。
逢えなかった時間も、お互いの状況も……全てが霧散して……2人だけの世界が広がる……。
かほりのチェンバロの上達はめざましく……、雅人はえも言われぬ恍惚感を覚えた。
わかりやすいカップルだこと。
東出夫人は苦笑すると共に、夫の龍爾がずいぶんと2人に肩入れしてる理由がわかるような気がした。
一生懸命なのに不器用で、才能と時間の無駄遣いばかりしているって言ってたっけ。
なるほど……恋も、音楽も……誰かの手助けが必要ってことね。
……まあ、尾崎雅人クンのほうは、人生まで、パトロンのマダムにおんぶに抱っこ状態……らしいけど。
とりあえず、そこから崩していく必要がありそうね。
そのためには……目標と保証を提示して、邪魔な負荷を捨てさせないと、ね。
東出夫人は、すぐ横に座っている政策秘書を手招きして耳打ちした。
既に、雅人の行状は完璧に調べ上げてある。
涙目で見つめ合ってる2人を眺めつつ、東出夫人は僅かな猜疑心をくゆらせていた。
……で……龍爾は尾崎雅人クンを抱いたのかしら?
……橘かほりお嬢さまには、さすがに手を出してないわよね?
何でもありなヒトだけに、ないとは言い切れないけど。
愛する夫の性癖をも熟知している東出夫人は、改めてステージの2人を眺めた。
……不毛な追いかけっこを、いつまで続けるのやら……。
人生はあっという間に過ぎゆくわよ……。
決断なさい。
自分の人生に、必要なモノを得るためには……諦めるモノも、捨てるモノもあるものよ。
子供じゃあるまいし。
さあ。
遊びはそろそろ終わりよ。
(リゾルート)
*.♪。★*・゜・*♪*.♪。★*・゜・*♪*.♪。★*・゜・*♪*.♪。★*・゜
「……弾いて。」
かほりが小声で雅人にそう指示したのを、代議士の東出先生……つまり指揮者の東出龍爾の妻は確かに見た。
……もちろん、声は聞こえない。
しかし、読唇術を学んだ東出夫人には、ハッキリと伝わってきた。
雅人もまた、ハッとしたようにうなずいて……カーテンを全開すると、まるでかほりにもたれかかるかのように寄り添って、ようやくギターをつま弾き、コーラスに参加した。
明らかに、茂木と一条はホッとしていた。
かほりもまた、安心して弾き上げた。
どちらからともなく自然にほほ笑みを交わす……。
逢えなかった時間も、お互いの状況も……全てが霧散して……2人だけの世界が広がる……。
かほりのチェンバロの上達はめざましく……、雅人はえも言われぬ恍惚感を覚えた。
わかりやすいカップルだこと。
東出夫人は苦笑すると共に、夫の龍爾がずいぶんと2人に肩入れしてる理由がわかるような気がした。
一生懸命なのに不器用で、才能と時間の無駄遣いばかりしているって言ってたっけ。
なるほど……恋も、音楽も……誰かの手助けが必要ってことね。
……まあ、尾崎雅人クンのほうは、人生まで、パトロンのマダムにおんぶに抱っこ状態……らしいけど。
とりあえず、そこから崩していく必要がありそうね。
そのためには……目標と保証を提示して、邪魔な負荷を捨てさせないと、ね。
東出夫人は、すぐ横に座っている政策秘書を手招きして耳打ちした。
既に、雅人の行状は完璧に調べ上げてある。
涙目で見つめ合ってる2人を眺めつつ、東出夫人は僅かな猜疑心をくゆらせていた。
……で……龍爾は尾崎雅人クンを抱いたのかしら?
……橘かほりお嬢さまには、さすがに手を出してないわよね?
何でもありなヒトだけに、ないとは言い切れないけど。
愛する夫の性癖をも熟知している東出夫人は、改めてステージの2人を眺めた。
……不毛な追いかけっこを、いつまで続けるのやら……。
人生はあっという間に過ぎゆくわよ……。
決断なさい。
自分の人生に、必要なモノを得るためには……諦めるモノも、捨てるモノもあるものよ。
子供じゃあるまいし。
さあ。
遊びはそろそろ終わりよ。