何度でもあなたをつかまえる
「強くなられたのね……かほりさま……。」
しみじみと領子に言われて、かほりは頬を染めた。
「……そうだといいのですが……優先順序が変わったのかもしれません。……ゐねや……自分自身を守るために……雅人を諦めてしまった……?」
自分で言ってて、苦いものが心に広がった。
結局、私は保身のために、雅人を切り捨てたのだろうか。
しょんぼりとうつむいたかほりに、領子はふっとほほ笑んだ。
「……母親なら当たり前ですよ。たとえ一時的に感情に流されて道を踏み外すことはあっても……子供を守るのは親の本能でしょう。」
「うん。……そうですよね。そのはずなんだけど……雅人は、そうは思ってくれないんだろうなあ。……雅人のお母さまは、リストラ中の夫と雅人を捨てて、他の男と逃げたんです。」
「あらあら。それでは、そもそも、価値観が違ったのね。……そういう男性は、幾つになっても、女性を信じられないか……行きすぎた母性を求めるのかしら……。」
価値観……。
かほりはため息をついた。
そう……ね。
どんなに好きでも、どんなに求め合っても……わかり合えない……。
「結婚して、ようやく、他人なんだな、ってわかりました。……生まれが違うとか、育ちが違うとか、ずっと母に言われてきましたが……一番違うのは、夫婦関係、親子関係の価値観だったのかもしれません。」
かほりは、そう言って、コテンと頭をテーブルにぶつけた。
領子は、ペリエをグラスに注いでかほりの前に差し出した。
「チェイサー、どうぞ。……そうね……でも、かほりさまは、なかなか頑固でいらっしゃるから。ご自分で納得されるまで、諦めませんでしょう?」
かほりはムクッと顔を上げて、領子の入れてくれたペリエを一気に飲み干した。
そして、領子に向かって、何度もコクコクとうなずいた。
「ええ。そうなんです。でもね、お義姉さま。私、変なんです。……雅人との離婚はあっさり決めたくせに……まだ雅人が好きなんです。」
真面目にそう言うかほりがおかしくて……領子は堪えきれず笑った。
「……笑われちゃった……。」
声をあげて笑う領子に、かほりはまたしょんぼりと落ち込んで、テーブルに突っ伏した。
しみじみと領子に言われて、かほりは頬を染めた。
「……そうだといいのですが……優先順序が変わったのかもしれません。……ゐねや……自分自身を守るために……雅人を諦めてしまった……?」
自分で言ってて、苦いものが心に広がった。
結局、私は保身のために、雅人を切り捨てたのだろうか。
しょんぼりとうつむいたかほりに、領子はふっとほほ笑んだ。
「……母親なら当たり前ですよ。たとえ一時的に感情に流されて道を踏み外すことはあっても……子供を守るのは親の本能でしょう。」
「うん。……そうですよね。そのはずなんだけど……雅人は、そうは思ってくれないんだろうなあ。……雅人のお母さまは、リストラ中の夫と雅人を捨てて、他の男と逃げたんです。」
「あらあら。それでは、そもそも、価値観が違ったのね。……そういう男性は、幾つになっても、女性を信じられないか……行きすぎた母性を求めるのかしら……。」
価値観……。
かほりはため息をついた。
そう……ね。
どんなに好きでも、どんなに求め合っても……わかり合えない……。
「結婚して、ようやく、他人なんだな、ってわかりました。……生まれが違うとか、育ちが違うとか、ずっと母に言われてきましたが……一番違うのは、夫婦関係、親子関係の価値観だったのかもしれません。」
かほりは、そう言って、コテンと頭をテーブルにぶつけた。
領子は、ペリエをグラスに注いでかほりの前に差し出した。
「チェイサー、どうぞ。……そうね……でも、かほりさまは、なかなか頑固でいらっしゃるから。ご自分で納得されるまで、諦めませんでしょう?」
かほりはムクッと顔を上げて、領子の入れてくれたペリエを一気に飲み干した。
そして、領子に向かって、何度もコクコクとうなずいた。
「ええ。そうなんです。でもね、お義姉さま。私、変なんです。……雅人との離婚はあっさり決めたくせに……まだ雅人が好きなんです。」
真面目にそう言うかほりがおかしくて……領子は堪えきれず笑った。
「……笑われちゃった……。」
声をあげて笑う領子に、かほりはまたしょんぼりと落ち込んで、テーブルに突っ伏した。