何度でもあなたをつかまえる
まさか、そんな風に甘えられるとは思わなかった雅人は、一瞬驚いたが……次第に口元が緩んで、にやけてきた。

かわいくてかわいくてたまらない。

「かほり。ふとん、邪魔。……ほら、口開けて。」

ペットボトルのキャップを開けて、雅人は掛布団を剥いだ。

さっきまで青白かったかほりの頬が赤く紅潮していた。

「……熱が出てるよ。冷却シートもあげよっ。はい、口、あーん。」

ゐねが物心つくまでは積極的に子育てに取り組んでいた雅人は、かつてより優しく甘く世話を焼いた。

かほりは、雅人に言われるがままに口を恐る恐る開いた。

てっきり、薬を口に入れてくれるのだと思った。

いや、雅人もそのつもりだった……が……。

素直に口を開けて、なぜか目を閉じたかほりがかわいくて……雅人は、素早く薬を自分の口に放り込むと、水を口に含み、かほりの唇に自分の唇を押し付けた。

薬よりも先に、雅人の舌がかほりの口の中に侵入してきた。

ビクッとかほりの身体が反射的に跳ねたけれど……逃れようとも抵抗しようともしなかった。

むしろ、夢中で舌を絡めた。

いつの間にか、薬と、唾液まじりの水も入ってきたけれど……もはや目的が変わってしまった。

2人は時間を忘れて、長い長いキスを味わった。

離れていた年月を取り戻すかのように……かつての激しい熱い口づけよりも強い意志を込めて貪り合う。


……愛してる、愛してる、愛してる……。

何も言わなくても、心が伝わってくる。

でも、伝えたい……。

好き……。

やっぱり、好き……。


かほりの瞳から流れた涙が、雅人の頬を伝う。

雅人は、やっと自分が生きていることを実感していた。

今まで誰と抱き合っても、こんな気持ちになることはなかった。

俺……ほんっとに……馬鹿だ……。

かほりさえいれば、いい。

他の女も、IDEAの成功も、もう……どうでもいいや。

かほりと……できたらゐねとも……アンサンブルをやりたい。

……また、かほりと一緒に……。


吐息だけじゃない……全身が熱い……。

かほりが欲しい……。

性欲じゃなくて……征服欲でもなくて……愛を確かめ合いたい。


雅人は、かほりの全身を確かめるように口づけ、愛撫し、交わった。

かつてと全く同じというわけではなかった。

2年のタイムラグは、かほりの身体を変えていた。

膣内が明らかに狭い……。

腰回りが痩せて、お尻は小さくなった気がする。

肩も……薄くなっちゃったなあ。

痛々しく感じる度に、雅人はかほりをぎゅーっと抱きしめた。
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