何度でもあなたをつかまえる
「……帰らなきゃって理性では思ってるんだけど……離れたくない……。……また、来ていい?」
雅人は、ぱあぁっと顔を輝かせて、うんうんと何度もうなずいた。
「あ。じゃあ、これ。あげるよ。いつでも来て。いや、言ってくれたら迎えに行く。タクシーだけど。」
そう言って、鍵の束をかほりに手渡した。
「……鍵……何でこんなにあるの?」
「えーと、玄関の鍵が3つと楽器の棚の鍵が5つと、これとこれがセコム、……あ。この2つは返してね。」
そう言って、雅人は鍵の束から事務所の鍵と、……おもちゃのような小さな真鍮の鍵を取った。
「え……その鍵……ゐねの?」
かつて、ドイツで買った錠前の鍵の片割れだ。
ゐねのお守りにするって決めてたのに……どうして、雅人が?
驚くかほりに、雅人は苦笑して肩をすくめた。
「……ゐねは……俺に関するものは全部排除したかったみたいだよ。ゴミ箱に捨てられてたのを……千尋くんが拾ってくれたんだって。……滝沢さんがくれた。さすがに、捨てられなくてね。」
「そうだったの……ごめんなさい、私……知らなかったわ……。」
そんなにも、娘の闇が深いなんて……。
こんなにも、雅人を……傷つけていたなんて……。
もう……これ以上……大切な2人を苦しませたくない。
でも、どうすればいい?
雅人と再婚すれば……ゐねをさらに追い詰めて傷つけてしまうかもしれない……。
かと言って、雅人を……あきらめきれない。
何度別れても、何度裏切られても、何度思い切っても……どうしても、雅人のことが好き。
「……げ。滝沢さん、キレてる……。」
携帯電話の電源を入れた雅人が、画面を見て顔を引きつらせた。
「心配して電話くださったのね……。あ……、私の携帯、充電させてもらえばよかったわ。……電話したほうがいい?あ!」
タイムリー……というか、たぶん夕べから何度も何度も何度も……数え切れないほど繰り返して電話してくれてたのだろう。
雅人はばつが悪そうに、画面をかほりに見せた。
<滝沢さん携帯>
そんな文字が点滅し、震えていた。
雅人は渋々電話に出た……スピーカーで。
『やっと出た!ちょっと!?尾崎、どういうつもり!?かほりちゃんは無事なの!?』
けたたましい声でりう子が喚いていた。
雅人は、ぱあぁっと顔を輝かせて、うんうんと何度もうなずいた。
「あ。じゃあ、これ。あげるよ。いつでも来て。いや、言ってくれたら迎えに行く。タクシーだけど。」
そう言って、鍵の束をかほりに手渡した。
「……鍵……何でこんなにあるの?」
「えーと、玄関の鍵が3つと楽器の棚の鍵が5つと、これとこれがセコム、……あ。この2つは返してね。」
そう言って、雅人は鍵の束から事務所の鍵と、……おもちゃのような小さな真鍮の鍵を取った。
「え……その鍵……ゐねの?」
かつて、ドイツで買った錠前の鍵の片割れだ。
ゐねのお守りにするって決めてたのに……どうして、雅人が?
驚くかほりに、雅人は苦笑して肩をすくめた。
「……ゐねは……俺に関するものは全部排除したかったみたいだよ。ゴミ箱に捨てられてたのを……千尋くんが拾ってくれたんだって。……滝沢さんがくれた。さすがに、捨てられなくてね。」
「そうだったの……ごめんなさい、私……知らなかったわ……。」
そんなにも、娘の闇が深いなんて……。
こんなにも、雅人を……傷つけていたなんて……。
もう……これ以上……大切な2人を苦しませたくない。
でも、どうすればいい?
雅人と再婚すれば……ゐねをさらに追い詰めて傷つけてしまうかもしれない……。
かと言って、雅人を……あきらめきれない。
何度別れても、何度裏切られても、何度思い切っても……どうしても、雅人のことが好き。
「……げ。滝沢さん、キレてる……。」
携帯電話の電源を入れた雅人が、画面を見て顔を引きつらせた。
「心配して電話くださったのね……。あ……、私の携帯、充電させてもらえばよかったわ。……電話したほうがいい?あ!」
タイムリー……というか、たぶん夕べから何度も何度も何度も……数え切れないほど繰り返して電話してくれてたのだろう。
雅人はばつが悪そうに、画面をかほりに見せた。
<滝沢さん携帯>
そんな文字が点滅し、震えていた。
雅人は渋々電話に出た……スピーカーで。
『やっと出た!ちょっと!?尾崎、どういうつもり!?かほりちゃんは無事なの!?』
けたたましい声でりう子が喚いていた。