何度でもあなたをつかまえる
「もしもし?ごきげんよう。そらくん。」
『おはよう。今日、時間ある?……仕事の話なんやけど。』
時間は……ある。
けど……。
一瞬ためらったけれど、せっかくいただいたお仕事をお断りすることはできない。
「万障繰り合わせて、うかがいますわ。……京都のお土産も渡したかったし。」
ひといきついてからそう返事した。
『OK。じゃあ、こっち来てくれはる?……何時でもいいよ。ランチ準備しとこうか?』
空は今、東出の東京の家に住んでいる。
東出の鎌倉の本宅には両親が健在だ。
妻は議員宿舎を利用しているが、東出の日本での仕事が増えたため、新しく東京に別宅を構えた。
フルオケが入れるレッスン室を備えた別宅は、狛江市の農場跡地に建てられている。
「ランチは……今日はよしておくわ。行きたいところもあるから。……すぐ出ますね。」
かほりはそう断わって、準備していた鞄を一回り大きなバッグに変えて、からのクリアファイルを入れた。
門前のインターホンを鳴らすと、そらが飛び出してきた。
「やあ。いらっしゃい。ちょうどプリンが焼けるわ。どうぞ。」
主のいない屋敷でも、レッスンに来る若い音楽家のために、そらは料理の腕を振るっている。
「ありがとう。これ、日持ちするみたいだけど……東出さんがお帰りにならなければ、みなさんで召し上がってください。」
和三盆のみで作られた上品なお干菓子と飴細工の詰め合わせだ。
季節をかたどった愛らしいお菓子は、東出よりも夫人へ向けて選んだ。
「東出さん、来週帰ってきはるよ。その時に使わせてもらうわ。ありがとう。」
そらが笑顔で受け取った。
邸内にはイイ香りが漂っていた。
まだ熱々のプリンと、濃いめのコーヒーで、そらはかほりをもてなした。
「で……お仕事って?なぁに?」
プリンが食べ頃になるのを待つ間に、かほりは本題を切り出した。
「あ、うん。……昨日さ、京都からオファーがあったんやけどさ……かほり、何か聞いてない?」
「え……京都って……。……竹原さん?」
名前を出すと、義姉だった領子(えりこ)を思い出して、ドキッとした。
『おはよう。今日、時間ある?……仕事の話なんやけど。』
時間は……ある。
けど……。
一瞬ためらったけれど、せっかくいただいたお仕事をお断りすることはできない。
「万障繰り合わせて、うかがいますわ。……京都のお土産も渡したかったし。」
ひといきついてからそう返事した。
『OK。じゃあ、こっち来てくれはる?……何時でもいいよ。ランチ準備しとこうか?』
空は今、東出の東京の家に住んでいる。
東出の鎌倉の本宅には両親が健在だ。
妻は議員宿舎を利用しているが、東出の日本での仕事が増えたため、新しく東京に別宅を構えた。
フルオケが入れるレッスン室を備えた別宅は、狛江市の農場跡地に建てられている。
「ランチは……今日はよしておくわ。行きたいところもあるから。……すぐ出ますね。」
かほりはそう断わって、準備していた鞄を一回り大きなバッグに変えて、からのクリアファイルを入れた。
門前のインターホンを鳴らすと、そらが飛び出してきた。
「やあ。いらっしゃい。ちょうどプリンが焼けるわ。どうぞ。」
主のいない屋敷でも、レッスンに来る若い音楽家のために、そらは料理の腕を振るっている。
「ありがとう。これ、日持ちするみたいだけど……東出さんがお帰りにならなければ、みなさんで召し上がってください。」
和三盆のみで作られた上品なお干菓子と飴細工の詰め合わせだ。
季節をかたどった愛らしいお菓子は、東出よりも夫人へ向けて選んだ。
「東出さん、来週帰ってきはるよ。その時に使わせてもらうわ。ありがとう。」
そらが笑顔で受け取った。
邸内にはイイ香りが漂っていた。
まだ熱々のプリンと、濃いめのコーヒーで、そらはかほりをもてなした。
「で……お仕事って?なぁに?」
プリンが食べ頃になるのを待つ間に、かほりは本題を切り出した。
「あ、うん。……昨日さ、京都からオファーがあったんやけどさ……かほり、何か聞いてない?」
「え……京都って……。……竹原さん?」
名前を出すと、義姉だった領子(えりこ)を思い出して、ドキッとした。