何度でもあなたをつかまえる
これまでにも何度かアンナは男をお持ち返りしたが、そんなかほりを気遣って、なるべく顔を合わせないようにしてくれていた。
なのに、今日は、どうしたということだろう。
玄関に呼びつけるなんて、はじめてだ。
……男癖と素行の悪さで実家から勘当されてるらしいが、あれでもアンナは宮廷に出入りする家のお嬢様で、マナーはわきまえているのだが……。
「スペシャルゲストだって。日本人の男ぉ?……武井空(そら)くん、帰って来たのかな?」
「そらくんは、来週。さっきメールあったもの。なんか、低い声してるうぅ~。」
気乗りしないかほりに代わって、ミュゼットを抱えたまま、雅人は玄関ホールへと出た。
「え……。」
アンナに腕を絡めとられて、困り切った顔をしている渋い顔の男を見て、雅人は絶句した。
「ほう。」
絶句してる雅人を見て、彼は目を輝かせた。
まるで獲物を見つけた野獣のような強い眼光だった。
知ってる。
このヒト……指揮者の、東出龍爾だ!
確か、オランダのあまり有名でないオケを常任指揮者として底上げした功績で、数年前にバイエルンの地方都市のそこそこ有名なオケの首席指揮者に就任してたはず。
東出の奥さんが、参議院選挙に出馬しても当選しても、帰国することも、コメントを出すこともなかったことが話題になっていたっけ。
「面白い楽器を持ってるな。昨今の芸能人は、下手くそなダンスだけじゃ足りないのか。」
東出はそう言って、ニヤリと笑った。
雅人は、ますます驚いた。
俺を……いや、IDEAを知ってるのか?
泣かず飛ばずで消えたのに。
「何か、やってみろ。」
高圧的に言われたが、反発も嫌な気もしなかった。
カリスマというやつか?
「……あ。じゃあ、どうぞ。」
玄関先で演奏するわけにもいかない。
「Ok! Come in,Dirigent.」
「わかったから。手を放せ。……おい、何とか言ってくれ。」
超ご機嫌さんなアンナと、嫌そうな指揮者(ディリゲント)は、賑やかに廊下を進んだ。
かほりが怯えてそうだな……。
なのに、今日は、どうしたということだろう。
玄関に呼びつけるなんて、はじめてだ。
……男癖と素行の悪さで実家から勘当されてるらしいが、あれでもアンナは宮廷に出入りする家のお嬢様で、マナーはわきまえているのだが……。
「スペシャルゲストだって。日本人の男ぉ?……武井空(そら)くん、帰って来たのかな?」
「そらくんは、来週。さっきメールあったもの。なんか、低い声してるうぅ~。」
気乗りしないかほりに代わって、ミュゼットを抱えたまま、雅人は玄関ホールへと出た。
「え……。」
アンナに腕を絡めとられて、困り切った顔をしている渋い顔の男を見て、雅人は絶句した。
「ほう。」
絶句してる雅人を見て、彼は目を輝かせた。
まるで獲物を見つけた野獣のような強い眼光だった。
知ってる。
このヒト……指揮者の、東出龍爾だ!
確か、オランダのあまり有名でないオケを常任指揮者として底上げした功績で、数年前にバイエルンの地方都市のそこそこ有名なオケの首席指揮者に就任してたはず。
東出の奥さんが、参議院選挙に出馬しても当選しても、帰国することも、コメントを出すこともなかったことが話題になっていたっけ。
「面白い楽器を持ってるな。昨今の芸能人は、下手くそなダンスだけじゃ足りないのか。」
東出はそう言って、ニヤリと笑った。
雅人は、ますます驚いた。
俺を……いや、IDEAを知ってるのか?
泣かず飛ばずで消えたのに。
「何か、やってみろ。」
高圧的に言われたが、反発も嫌な気もしなかった。
カリスマというやつか?
「……あ。じゃあ、どうぞ。」
玄関先で演奏するわけにもいかない。
「Ok! Come in,Dirigent.」
「わかったから。手を放せ。……おい、何とか言ってくれ。」
超ご機嫌さんなアンナと、嫌そうな指揮者(ディリゲント)は、賑やかに廊下を進んだ。
かほりが怯えてそうだな……。