何度でもあなたをつかまえる
何も変わらない。

今までだって、学校は違った。

かほりは私立の女子校、雅人はずっと公立で共学。

たぶん、かほりの知らないところで、雅人は遊んでもいただろう。

でも、放課後は毎日一緒に過ごしてきた。

共に音楽を学び、奏でてきた。

ワークショップやコンクール、ステージにも一緒に立ってきたし、長期休暇は海外研修も一緒に行った。

課題曲によっては、別の楽器の子も合流したが……笑ってしまうほどに、どの子も雅人の色香に惑い、関係し、……最終的には、かほりによって粛清されてきた。


だから、2人にとっては、今回の雅人の結婚も、……突き詰めてしまえば、あやまちでしかなかった……。


かほりは、雅人に何も聞かなかった。

もちろん、急に帰国して大阪まで来た理由についても、何も言わない。

ただ、どれだけ深く強く激しく雅人を愛しているか……言葉ではなく、身体で伝えた。


それだけで充分過ぎるほどだ。


不毛な結婚と、気を紛らわせるための遊びに疲れていた雅人には、かほりだけが、救いで、希望に思えた。

罪悪感は、かほりの愛情に許されて霧散した。

無我夢中で最愛の存在にすがりつき、むさぼり、愛を注ぐ。

いっそ妊娠してしまえばいいのに……。

そんな想いがなかったと言えば嘘になる。

ずっと、こうして、かほりを抱いて生きていきたい。

それこそが幸せだと、雅人は再認識した。


足りない……。

どれだけ抱いても、足りない。



飛行機でほとんど眠れなかった上に、時差ぼけもあるかほりは、絶頂すると気絶するかのように眠りに落ちてしまう。

雅人はその都度、新たな刺激でかほりを揺り起こした。


俺を見ろ。

俺を感じろ。


そんな鬱憤をかほりにぶつけるかのように、激しく蹂躙し、翻弄した。





冬の長い夜がすっかり白む頃、ようやく雅人が力尽きて、倒れ込み、そのまま動かなくなった。

……軽い寝息を耳にして、かほりも安心して意識を手放した。


涙と汗と体液で、身体だけじゃなく、シーツもぐちゃぐちゃだったけれど……もう、指1本も動かせない……。

このまま、死んでもいい……。

いいえ。

死んでしまいたい……。


いびつな形で抱き合ったまま、永遠を望んだ。


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