何度でもあなたをつかまえる
えーと……何か、失敗したかな。

滝沢さんとは円満解決できたっぽいけど……かほりのプライド、傷ついたかな……。


「……離婚届は、すぐ書く。でも、婚姻届は、橘さんの承諾を得てからにしよう。……本当は、IDEAが軌道に乗って、ある程度の金ができてから……ちゃんとした結納とか、指輪とか、披露宴とか……したかったんだけど……」

「……うん。雅人の気持ちはわかる。ありがと。……でも、りう子さんとは無条件で入籍したのよね?……ずるい……。」

かほりの表情が仮面のようにこわばっている。

ずるい、と言われて、雅人は困ってしまった。

「ごめん。……でも、妊娠したと思って……」

「うん。聞いた。それも、わかる。……でも、ずるい。……だったら、私も……雅人の子供が欲しい。」

そう言って、かほりはするすると雅人の身体を伝って、床に膝をついた。

そして、雅人の股間に頬を擦り付けた。

「……かほり?……酔ってる?」

らしくないことを始めたかほりに、雅人は多少驚いたが……かほりにせがまれてると思うと……ムクムクと欲望が鎌首をもたげる。

「窮屈そう。」

かほりはそう呟いて、ファスナーを下ろした。


……マジか……。

まるで別人のように積極的……というか……娼婦か風俗嬢のように、かほりは雅人を脱がせて、手に取り、弄び、唇と舌を駆使して、雅人を刺激した。

そんなことしなくても、かほりの身体は、雅人にとってはまるで誂えたかのように、最高なのに……。


あえなくイカされてしまった雅人は、攻守交代とばかりに、かほりを押し倒した。

「……どこで覚えた?誰に教わった?……あいつ……そらくん?」

本気で疑っているわけではないが、雅人にはイニシアティヴを取り返す必要があった。

いつものかほりなら、泣いて弁明するはずだった。

でも、かほりは……艶然と笑った!

否定も肯定も弁解もせず、ただほほ笑んで、雅人に向かって手を伸ばす。

「……上書き……して……。」


曖昧な言葉だった。


夕べりう子を抱いた雅人にかほりを上書きするのか。

逢わなかった1年以上の間に、他の誰かと何かがあったかもしれないかほりに雅人を上書きするのか。


……頭では、前者だとわかっている。

わかっていても……雅人は、苛立ち、余裕を失い……かほりの身体を露わに剥くと、貪り尽くして、貫いた。
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