鏡の中のワタシ
私とワタシ
『ねぇ隼人(はやと)、今日は何の映画見に行く?』
『麻友(まゆ)が見たいのでいいよ。それより映画見終わったら俺の家にくるだろ?』
『もぉ〜隼人のエッチ』
学校が終わり、帰りの準備をしている私の隣の机でそんな会話が聞こえた。
私は心の中で舌打ちをする。
隼人は私の幼馴染で、高校も隼人と同じ高校に行きたくて一緒の高校を受験した。
私は小さい頃から隼人が好きで、隼人の一番近くに居たのは私だった。
幼馴染だったから中々気持ちを伝える事ができなかったけど、隼人も部活をしていたこともあり、中学生の頃は彼女は居なかった。
高校に入学して私と隼人は奇跡的に同じクラスになった。
高校生になったし、入学して一ヶ月が経った頃、私は隼人に思い切って自分の気持を伝えようと決めた。
だけど……あの女(麻友)が隼人と付き合う事になったと聞かされた。
ショックだったし信じられなかった。
私は麻友が憎くて仕方なかった。
いつも隣を歩いていたのは私なのに、今はあの憎たらしい女が隼人の隣を歩いている。
ずっと、ずっと、好きだったのに、どうして隼人はあの女と……。
「加奈子(かなこ)も途中まで一緒に帰ろ?」
私の気持も知らないで麻友は私に声をかけてきた。
「これから二人はデートなんでしょ?邪魔しちゃ悪いから一人で帰るよ」
「何だよ加奈子、麻友は俺達が幼馴染って知ってるんだし気にするなよ、なっ麻友?」
「そうだよ加奈子、駅まで一緒に帰ろ?」
「……うん」
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