鏡の中のワタシ
行為が終わり、隼人は少し眠っていた。
私はシャワーを浴びて服に着替えると、鏡の前に座った。
隼人が起きないように鏡の中のワタシに心の声で話しかけた。
『さっきはありがとう。凄く幸せだった』
『それは良かったわね?でも、あなたは抱かれたとしても、麻友がいる限りは隼人の一番になれない、悔しくないの?』
『それは確かに悔しい……』
『じゃあ……隼人があなただけの物になるまで私が協力してあげる』
『どうやって?』
『暫くの間、私があなたの体を借りて麻友と隼人を別れさせる。殺したらあなたは犯罪者になるものね?隼人を独り占めする為には別れさせるしかないでしょ?私に任せて、きっと上手くいくし、あなたの苦しみを麻友にも与えなきゃね?じゃあ私を見つめて』
そう言われて先程と同じように、もう一人のワタシを見つめた。
さっきと同じ現象が起きて、もう一人のワタシが体の中に入ってくるのを感じた。
『私に任せて、全て上手く行くしあなたの思い通りになるから……アハハハハッ』
もう一人のワタシは不気味なくらい笑っていて、私は少し心配になった。
そして暫くすると隼人が目を覚ました。
「起きた?」
「加奈子、ごめん俺……」
「謝らないでよ、私が隼人にお願いしたんだし」
「でも俺は麻友を裏切ってしまった」
「じゃあ別れて私と付き合ってよ?」
「えっ?でも……」
「冗談だよ?だけど麻友に言わない代わりにお願いがあるの」
「お願い?」
「毎日、私を抱いて?」
少し考えた隼人はわかったと言うと、着替えて自分の家に帰って行った。
本当に上手くいくのかな?
だけど、明日もまた隼人に抱かれるんだと思ったら嬉しくて仕方なかった。