鏡の中のワタシ
次の日、私が目を覚ますともう一人の私は既に起きていて、学校に行く準備をしていた。
普段は休みの日に出掛ける時くらいしかメイクをしないけど、もう一人のワタシは鏡の前に座ってメイクをしていた。
「どうしてメイクなんて?」
「だってあなたは顔は綺麗だしスタイルだっていいのに、大人しくて色気だってないじゃない?だからメイクしてるのよ」
「みんな驚かないかな?」
「周りの目なんて気にする必要はないじゃない?だから隼人にもずっと告白すら出来なくて、鏡のワタシに恨みをぶつけてたでしょ?自分から変わらなくちゃ何も出来ないままの人生で終わるよ?」
そう言われたら何も言えない。
もう一人のワタシが居たから隼人に抱かれる事が出来たのだから。
メイクも終わり少し早めに家を出て、隼人が家から出てくるのを待った。
少しすると玄関から隼人が出てきて声をかける。
「おはよう隼人」
「お、おはよ……加奈子、今日はメイクしてるんだな?」
すると私の体は隼人に抱きついて耳元で言った。
「隼人に綺麗だって思われたいからに決まってるでしょ?また今夜は家に来てよ、約束だからね?来なかったら……」
「わ、わかったから行くから、だから麻友には……」
「言わないよ?じゃあ行こうか?」
そう言って隼人の手を繋ぎ歩いて行く。
隼人も何も言い返さない。
駅に着くと手を話していつも通りの二人に戻る。
そして学校に着くと、私の変わった姿に皆が私を見ているのがわかった。
教室に入って直ぐに、周りに居た友達が私の席に集まってくる。
『加奈子、メイクするといつも以上に綺麗だし羨ましいな』
『メイク上手だし今度私にも教えて』
など色々な友達に話しかけられた。
もう一人のワタシも上手くそれに答えて会話は弾む。
すると遅れて麻友が教室に入ってくると、私の顔を見て、直ぐに私の席に来るのがわかった。
「おはよ、加奈子。今日は」
そう言いかけた麻友の言葉を遮るように私の体は席を達、隣りにいた友達に声を掛けた。
「ねぇ、トイレ行きたいから一緒に行こ?」
「いいよ」
そう言って麻友をみないように周りにいた三人の友達と一緒にトイレに行った。
私達が教室に戻ると麻友はそのまま自分の机に戻っていて、もう一人のワタシは麻友に視線を向けることなく自分の席に座った。