星天リフレクション
「私、買いに行ってくるよ」
思いつくのと同時にアイスペールをダイニングテーブルに置いた。
駅から渚ちゃんの家に歩いてくる途中にコンビニがあったのを思い出したから。
自分の行動力に感心しながら住宅地を抜けて広い通りへと出た。ここからは駅へと向かう下り坂。ここにも花火鑑賞を心待ちにする人たちがあふれている。
ふと聴こえてきたのは忙しなく駆けてくる足音。まさか、ありえないと思いつつも期待を込めて振り返る。
「和田さん、待って」
貴一じゃない。
貴一よりもわずかに大きな肩幅、背の高いシルエットが私の名を呼ぶ。息を切らせながら追いついたのは俊也君だった。
ちょっとがっかりしたのと意外だったのと、複雑な気分でいると俊也君がひとつ咳払い。
「コンビニ、坂上がったとこの方が近いから、こっち行こうか」
この辺りは私の地元じゃないから地理感はまったくない。俊也君に任せて方向転換。私たちは駅とは反対側の山手へと向かって、坂道を上り始めた。