星天リフレクション
花火の打ち上げが始まるまでに氷を買って戻ろうと思っていたのに、間に合わなかった後悔と早く戻らなければという焦りがこみ上げる。
「さっきの道に戻ろうよ、戻った方がいいんじゃない?」
引き返そうと足を止めたら俊也君が私の腕を掴んだ。街灯の灯りは逆光になっていて表情までは読み取ることはできない。
「和田さんは好きな人いるの?」
降ってきたのは低くて抑揚のない声。
私の答えを待たずに俊也君が歩き出す。
私は俊也君に引っ張られるまま、次々と打ち上がる花火の音を聴きながらすぐ近くの公園へ。
公園の入り口には花火を観る人たちが疎らにいたけれど、中には人の姿は見られない。
俊也君は構わず公園の奥へとずんずん進んでいく。
さすがに怖くなってきて、思いきり足を踏ん張って俊也君の腕を解いた。
「俊也君、待ってよ、早く戻らないと……」
俊也君が大きく息を吐く。
「貴一のこと、どう思ってるの?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「いいから答えてよ、貴一が好きなんだろ?」
わずかに苛立ちの感じられる声。
強い語気が私に答えを促す。