星天リフレクション

思いの外近くに俊也君の顔が迫ってる。周りを見渡す余裕なんてない。今すぐに後ずさってしまいたいけれど抱きかかえられた状態のまま。


「貴一じゃなくて俺を見てよ」


吐き出した声は力なく、俊也君は私の肩に顔を埋めた。


「俊也! 何してんだよ」


花火の音に紛れて聴こえたのは貴一の声。


ふわっと俊也君の腕が解けて、私は突き放されるように貴一の元へ。貴一の後から駆け寄ってきた渚ちゃんが荒い息をしている。


貴一は私を置いて俊也君へと向かっていく。


「ごめん、貴一」


ひと言こぼした俊也君は、諦めたように目を閉じた。貴一の肩が揺れて拳を握り締めたように見える。


「貴一、やめて」


止めなくちゃ、と走り出すより早く渚ちゃんが飛び出した。俊也君へと駆け寄って貴一の進路を阻む。


「貴一君、ごめんなさい、私が悪いの」

「渚ちゃん退いて、俺は俊也に腹立ってんの」

「違う、全部私が……俊也君と美咲ちゃんをふたりになるようにしたの」


深く頭を下げた渚ちゃんの足元へ、ぱらばらと大粒の雫が落ちていく。




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