星天リフレクション
「俊也君が美咲ちゃんを好きだって気づいてたから、ふたりきりにしてあげたかったの……ごめん」
渚ちゃんは今にも崩れ落ちそうに項垂れる。痛々しいほどに涙を拭う姿にかける言葉は見つからない。
いや、私には声をかける資格なんてない。ずっと誤解していたのだから。
俊也君が渚ちゃんを好きだと思っていたのは間違いで、本当は渚ちゃんが俊也君のことを好きだった。二人が良い雰囲気に感じられたのは渚ちゃんの努力と想い。
自分の鈍さが情けなくなる。
だけど、私の気持ちは揺るがない。
「みんなで花火観ようって、そういうことだったのか」
俊也君の問いかけに渚ちゃんは頷いた。
「最後の夏休みだから……」
「だからって、他人(ひと)のに手を出すのは反則じゃない?」
渚ちゃんのか細い声をぴしゃりと遮ったのは貴一だった。口を尖らせて俊也君を睨んでいる。普段仲が良いだけに、俊也君の行動は納得できなくて簡単には許せないのだろう。
「貴一、ごめん。横取りするつもりはなかったんだ……言いたかっただけ」
寂しそうに笑う俊也君の肩に、貴一が拳を押し当てる。
「俺のだから」
花火の音に負けない力強い声が残響しながら身体中に沁みていく。