星天リフレクション
「誰?」
これもまた想定外。そこまで追求されるとは思わなかった。
さっきまでくるくると指先でもてあそんでいたシャーペンをぎゅっと握りしめて、貴一が顔を上げた。
「家庭科部のヒカリちゃん」
「ふぅん、ヒカリちゃんは彼氏と花火行くんじゃなかったの?」
「さあ……、知らない」
テキトーについた嘘に貴一の顔が変わっていく。ふいと目を逸らして不機嫌そうな顔を隠すように、再びノートへと視線を落とした。
私の嘘なんて簡単に見抜かれているのかもしれない。
「そっか、水泳部の三年で行こうかって話してるんだけど無理ならいいよ」
ぼそっと一言。感情のこもっていない投げやりな口調で。
なんだ、二人きりじゃないんだ。それなら最初から言ってくれればよかったのに。二人きりでないことにちょっと安心したけれど、なんだかもやもやしてしまう。
「そう、だったら行くけど私は部外者だよ?」
「大丈夫、水泳部以外にも参加する予定だし、カラオケはいいの?」
「うん。べつにいい」
「よし、決まりな」
ちらりと顔を上げた貴一の表情が、ほんの少しだけ緩んだように見えた。