星天リフレクション
「美咲、いつものでいい?」
「うん、先に座ってるね」
いつも通りの会話をしながら私は空いた席に着く。
ここで過ごすのは日課とはいえ警戒心は解けない。
夏休みのショッピングモールのフードコートは中高生が溢れていて賑やかで、学校に居るんじゃないかと錯覚してしまうほど。
決して大袈裟ではない。ちょっと見回せば知り合いが居てもおかしくない。
そう思いつつ顔を上げたら、ばっちり目が合ったのはよく知ってる顔。まさに高校の同級生だった。
ほんのりと日焼けした肌にノースリーブの白いシャツが良く映えている。ひらひらとロングスカートを揺らしながら駆け寄ってくる彼女は、貴一と同じ水泳部のマネージャーの渚ちゃんだ。お母さんと一緒に買い物に来たのだという。
私は……と説明する間もなく、貴一がフライドポテトとドリンクを抱えて戻ってきた。
なんてタイミングが悪いんだろう。
渚ちゃんは私たちを交互に見て不思議そうな顔をする。
『付き合ってるの?』と今にも言い出しそうな唇を噛んで、目を瞬かせて。
水泳部の渚ちゃんが私たちのことを幼馴染みだと知らないはずはないだろう。今さら説明するまでもないけれど、それ以上の追求はできればやめてほしい。