【短編】小さな恋物語
視線
………痛いです。
何が痛いって視線がね。
ここは放課後の教室。
吹奏楽部の私は教室に楽器を忘れていってしまった。だからさっさと取って部活に戻りたいわけで。
電気1つ付いていない教室から誰もいないだろうと確信した私は、勢いよく後ろのドアを開けたわけで。
「え……」
人がいるなんて全く考えもしなかった……
教室の中に、しかも男子が私の席に座ってる現状をすぐ理解出来ず、私はドアの前で立ち止まってしまった。
もしかして、こっち見てる……?
そりゃそうですよね。
あんな音たてて教室入ってくる人がいれば誰だって見ますよね。
だけど私から見てもこの状況は絶対おかしいと思う。
お兄さん
君は何故に私の席に座ってるのかい?
そして何故にさっきからこっちを睨み続けてるのかい?
そこまで勘にさわる事しましたっけ?
たかがドアを勢いよく開けただけですよ?
おかげで私はさっきから一歩も動けないままなんですけど。
蛇に睨まれる蛙って
こんな気持ちなんだろうか……