溶ける部屋
リビングの右手にはトイレとお風呂も付いていて、蛇口を捻ってみるとちゃんと水道が出たのでみんなはホッとしたようにほほ笑んだ。


水が出るなら、しばらくは安心だ。


「で、これからどうする?」


なんとなくみんなでリビングの椅子に座った時、健がそう言った。


人数は合計6人。


リビングの椅子は1つ余っている。


「どうするって言っても……」


郁美が首を傾げて健を見た。


「今日は1日ここに泊まることにしよう。明日森を抜けて街へ下りればいい」


小柄な男の子がそう言った。


外はもう真っ暗で、その言葉を反対する意見は誰も言わなかった。


「じゃぁ、とにかく自己紹介しようよ」


ずっと黙っているのも気まずいと思い、あたしはそう提案した。


「そうだね。ここで奇妙な出会い方をしたけど、名前くらい教え合った方がいいね」


そう言ってくれたのはあの派手な女の子で、あたしは内心驚いていた。


こんなに気さくに話をしてくれるとは思っていなかった。


それとも、この状況が協調性を作り出しているのかもしれない。
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