溶ける部屋
☆☆☆

部屋の中央に座ると、健のぬくもりがまだ残っていた。


窓から差し込む光で室内のホコリが漂って見える。


このホコリをあたり体内に取り込まないほうがいいだろうと思うけれど、それでは部屋に入っている意味がない。


あたしはぼんやりと窓の外を眺めることにした。


あの大きな沼があるからか、動物たちの姿は見えない。


あるのは鳥の姿だけだった。


外は風が強いのか、木々が大きく揺れている。


雨でも降るかもしれない。


そんな事を考えていると、自分がやけに落ち着いた気分になっていることに気が付いた。


横になれば眠ってしまえそうな、そんな感覚。


そして徐々に胸の奥が熱くなるのを感じ始めた。


これがみんなの言っていた、懐かしいような感覚なのかもしれない。


決して嫌な気分じゃない。


むしろその逆。


すごく心地がいい。


ずっとこの部屋にいたくなるような感じだ。


胸の奥の熱は懐かしさから愛情へと変化していく。
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