溶ける部屋
「じゃぁ、言いだしっぺからね」


女の子にそう言われ、あたしは慌てて立ち上がった。


知らない人の前で自己紹介するのは緊張して頬が赤くなるのがわかった。


「あ、あたしは渡辺明日香。田所高校の1年生です」


そう言い、ペコリと頭を下げる。


「そんなに緊張しなくても、新しいクラスの自己紹介じゃないんだから」


郁美がそう言い、笑った。


あたしは「そっか」と呟き、席に座った。


「次はあたしね。あたしは明日花の親友の戸長郁美。明日花とはクラスも同じだよ」


郁美は座ったままそう言った。


「じゃぁ次は俺か」


郁美の隣に座っていた健が立ち上がり、そう言った。


「俺は北村健。明日花と郁美と同じクラスだ」


そう言い、頭を下げて座った。


「僕は黒川トシです。林高校の1年生です」


「俺は保孝弘明(ヤスタカ ヒロアキ)新上高校の1年だ」


「あたしは竜童伶香(リュウドウ レイカ)弘明と同じクラスで、恋人」


その自己紹介にあたしはやけに納得してしまった。


2人は恋人同士だったのだ。
< 11 / 205 >

この作品をシェア

pagetop