溶ける部屋
☆☆☆

1人5分はあっという間だった。


あたしたちは全員広間に集まり、最後に部屋に入った弘明が書き終えるのを待っていた。


あたしは膝の上で手を組み、ソワソワしながら待っていた。


今日で何かが変わる。


そう思えて仕方がない。


「書けたぞ」


弘明がペンを置いてそう言った。


「よし、じゃぁみんなの紙を真ん中に置いて、調べてみよう」


健がそう言い、5人分の用紙をテーブルの真ん中に並べた。


その1つ1つをみんなで読んでいく。


「これ……すごくない?」


最初にそう言ったのは伶香だった。


「うん、すごい」


あたしは頷く。


「みんな、7歳の頃にあの公園で遊んでたんだ……」


郁美が信じられない、という様子でそう言った。


そう。


みんなの紙に書かれていたのはあの公園で遊んでいた時の記憶だったのだ。


弘明と伶香も、全く同じ。


「でも、どうしてだ?」


健が弘明と伶香へ向けてそう聞いた。


2人の存在をあたし達は知らなかった。


同じ学校でもなかったはずだ。


「俺は小学校の1年生の頃、この街にいたんだ」


弘明がそう言った。
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