溶ける部屋
「たった1年だし、俺ももうすっかり忘れてたんだけどな」


それが、あの部屋に入る事で思い出されたのだ。


「あたしは小学校2年生くらいまでこの公園で遊んでたよ。家が遠いから時々お母さんに連れてきてもらう程度だったけれど、何度か沢山の子達と遊んだ記憶があるの。それがきっと、弘明や健や明日花や郁美だったんだと思う」


伶香が言う。


「俺たちの共通点は、あの公園で遊んだってことか……」


健がそう言い、大きく息を吐き出した。


1つでも可能性を見つけ出す事ができて、安堵しているのがわかる。


あたしも健と同じ気持ちだった。


このまま何もわからない状態が続くと思っていたから、すごく前進した気分。


「あの公園って、何があったんだっけ?」


郁美がそう言った。


「なにって、サッカーとか野球ができる広場に、遊具が置いてあるスペースだろ?」


弘明が言う。


「そうだけど。それじゃ普通すぎない? もっと特別な何かがあったから、あたしたちが今こうして集められてるんだと思うんだけど」


郁美の言う通りだ。


ごく普通の公園で、ごく普通に遊んでいただけなら、こんな事に巻き込まれたりはしない。
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