溶ける部屋
部屋に入った瞬間、心地よい気持ちが体中を支配した。


フワフワと雲の上を歩いているような感じがする。


あたしはドアの横に座って窓の外を眺めた。


今日も相変わらずいい天気で、小鳥たちが遊んでいるのが見えた。


この辺が住処になっているのか、同じ種類の鳥が何匹も飛んでくるのがわかった。


それはまるで、あの公園にいたあたしたちの様だった。


健に郁美に弘明に伶香。


それにきっとその中にトシもいたんだ。


他の子たちに混ざってあたしたちは一緒に遊んでいた。


みんなとても仲が良くて時々けんかをしてもすぐに仲直りして、次の日にはまた同じように遊んでいたっけ。


懐かしさに目を閉じる。


頭の中がボーっとしてきて、今にも眠ってしまいそうだ。


あたしは膝を抱えてうずくまった。


弘明が言っていた変わった女を記憶の中で探す。


しかし、思い出すのは懐かしくて楽しい事ばかり。


そして、時々今の健を思い出しては胸の奥がカッと燃えるように熱くなった。


好きだという感情があふれ出してしまいそうになる。


健の手の大きさや温もりを思い出すと体が疼きだす。


あたしは自分の頭の中から無理やり健の存在を追い出した。


今は健の事じゃなくて、あの公園の事を思い出さなきゃいけない。
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