溶ける部屋
☆☆☆

夕方になり、あたしはようやく自分の部屋から出てきていた。


動こうとしても健がなかなか許してくれなかったのだ。


夕飯はみんなと一緒に食べたいから。


そう言ってやっと許してもらえた。


「ほら、ここ座れよ」


健がいつもとは違う席にあたしを座らせてその隣に自分が座った。


「あたしはもう大丈夫だよ?」


そう言うのに健は「念のためだ」と言ってきかない。


夕飯の準備はちゃんと手伝おうと思っていたあたしは、仕方なく健の隣で大人しくしている事になった。


今日の夕飯はハンバーグだ。


あたしと弘明の為にアッサリした大根おろしがかけてある。


「伶香って何でも作れるんだね」


ハンバーグをひと口食べて、その美味しさに感動してしまうあたし。


「そう言ってもらえると、調子に乗っちゃうよ?」


伶香は嬉しそうにそう言った。


「伶香は将来料理研究家になるんだ」


そう言ったのは弘明だった。


「え、そうなの!?」


あたしは驚いてそう聞いた。


伶香は照れたように顔を赤くして「なれるかどうかは、わかんないけどね」と、言った。
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