溶ける部屋
「あの絵の子が、俺の思い出した女なのかもしれないって、思うんだ」


弘明の言葉にあたしは箸を止めた。


「トシも同じこの事を思い出してたってこと?」


伶香が聞く。


「あくまで、推測だけどな」


弘明は慌ててそう付け加えた。


「あたしも……」


「え?」


小さなあたしの声に気が付いて、郁美がこちらを見た。


「あたしも、公園内の女の子のシルエットを見た」


その言葉に一瞬部屋の中が静かになった。


重苦しさを感じる沈黙を破ったのは弘明っ立った。


「本当か!?」


「うん。だけど、顔も名前も思い出せないの。ただ、女の子で、その子を見て弘明は『変な子』だって言ってた」


「まじか、俺、そんな事言ってたか?」


弘明は首を傾げてそう言った。


どうやら自分の発言は思い出していなかったようだ。


だけど、これで3人の記憶が一致したと言う事になる。


「7人目……だったりして」


伶香が小さな声でそう言った。


『7人目』という言葉にみんなが黙り込んだ。


1つ多かった椅子。


1つ多く、鍵のかかった部屋。


それがあの子のいるべき場所だったとしたら……?
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