溶ける部屋
「覚えてる」


そう言ったのは弘明だった。


あたしは驚いて弘明を見た。


「やっぱり、イジメの主犯だったからマミちゃんの事をしっかり覚えてるんだね」


郁美がそう言って弘明を見た。


弘明は大きく息を吸い込んで、観念したように話し始めた。


「いつも通り公園にいって、いつものメンバーでマミをイジメてやろうと思ってたんだ。だけど公園にマミはいなかった」


「その前日から、大人たちはマミちゃんを探してたんだよ」


郁美が言う。


「マミちゃんはどこかへ行ってしまったの?」


あたしが聞くと、郁美は頷いた。


「そうだよ。7月13日に、マミちゃんはいなくなった」


7月13日……。


その日に覚えはなかった。


「マミちゃんの失踪と俺たち、何が関係あるんだよ」


健が聞く。


「そこまでは、わからない」


郁美がそう言い、大きく深呼吸をした。


「ごめん、少し疲れたからベッドで横になりたい」


そう言い立ち上がろうとする郁美に手を貸した。


郁美の体にふれるとドロリとした感触がする。


体が溶けるのは止まっているようだけれど、表面だけ崩れ落ちていく。
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