溶ける部屋
弘明はこけたマミちゃんに何かを言うと、そのまま走って行ってしまった。


残されたマミちゃんは1人で立ち上がり、スカートのホコリを手ではらうと再び歩き出した。


マミちゃんが画面から外れると一旦テレビは真っ暗になり、すぐに別の映像を映し出した。


そこに写っていたのは見覚えのある公園で、あたしは画面に身を乗り出した。


画像が荒くてわかりにくい中、公園の中に1人の少年が走って入って来るのが見えた。


これは弘明だ。


弘明は公園の中に入ると、すぐに友達の輪の中に馴染んでいった。


こうして見ていても、弘明が中心になっているのがよくわかる。


弘明の後を追いかけるようにして、女の子が1人公園の中に入って来た。


大人の女性に手をひかれながら入って来た子は……伶香?


画面上の顔には今の伶香の面影があった。


ということは、一緒に来た女性は伶香のお母さんなのかもしれない。


伶香のお母さんは1人でベンチに座ると、本を読み始めた。


伶香を見つけた弘明が何かを言い、手招きをしている。


伶香はすぐ弘明の方へと走って行った。


2人は昔から中が良かったみたいだ。
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