溶ける部屋
その状態でカメラは切り替わり、今度は立ち並ぶ民家が映し出された。


ここも、よく通る場所だ。


所々にお店があるから、監視カメラが付けられていることも知っている。


そこに写っていたのは犬の散歩をしている健とあたしの姿だった。


「クロだ」


健がそう言った。


「昔健の家で飼ってた犬だね」


「あぁ。中学に上がるころに死んだんだ」


その言葉にあたしは頷いた。


あたしもあの時はとてもつらかったから、よく覚えていた。


そんな中、画面の上の方にマミちゃんが立っているのが見えた。


マミちゃんは家の前で茫然と立ち尽くしている。


その姿に気がつき、近寄るあたしたち。


何かを話しているが、しばらくするとあたしたち2人はマミちゃんをそこに置いて歩き出してしまった。


「今の、俺覚えてる」


健が呟くようにそう言った。
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