溶ける部屋
「え？」


「あの時、マミちゃんは家の鍵がなくて入れないって泣いてたんじゃなかったか？」


「鍵？」


あたしがそう聞き返すと、伶香がハッと息を飲んで弘明を見た。


弘明は青ざめた顔をしていて、今にも倒れてしまいそうだ。


「そうだった！　あの時公園で奪ったのは家の鍵だったじゃん！！」


伶香が言う。


弘明は何も答えず小刻みに震えている。


「『鍵は明日返してやる』って言って、弘明公園から出て行っちゃったんだよ！」


伶香の記憶が鮮明によみがえりはじめる。


「それじゃ、マミちゃんは家に入れなかったってこと？」


あたしは聞く。


「わからない。でも、きっとそうなんだよ」


伶香が早口でそう言った。


しばらく画面を見ていると、マミちゃんが立ちあがり歩き出した。
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