溶ける部屋
公園がある方向だ。


そしてまた画面は公園へと切り替わった。


マミちゃんは必死になって何かを探している様子が映し出されている。


間違いなく、弘明に奪われた鍵を探しているのだろう。


マミちゃんは遊具の隙間や砂場の砂の中に手を入れて懸命に鍵を探す。


その姿は痛々しいほどだった。


マミちゃんが鍵を探し始めて10分ほど経過した時、公園の入り口に一台の黒いバンが停車した。


見たことのない車だ。


車は入口を塞ぐように止まると、しばらくの間動かなかった。


マミちゃんは車の存在に気が付かないまま鍵を探し続けている。


と、その時だった。


車の後ろのドアが開き、1人の男の子が出て来たのだ。


しかし、その様子はおかしかった。


男の子は車から出ると何かから逃げるように公園内を走りだしたのだ。


その後を大人の男の人が追いかける。


男の子は鍵を探しているマミちゃんの服を掴むと、そのまま引っ張った。


マミちゃんはその場にこけてしまう。


男の子はこけてしまったマミちゃんに見向きもせず、広場の方から逃げて行ってしまった。


男2人がマミちゃんを見下ろしている。


なにか会話をしたあと、マミちゃんが強引に立たされた。


男の腕の中で抵抗するマミちゃん。


しかし、大人の男2人の力にかなうはずがない。


マミちゃんは口をふさがれ叫ぶこともできないまま、車の中へと連れ込まれてしまったのだ。


「今の、なに……？」


あたしは茫然としてそう呟いた。


しかし、誰も返事をしない。


「逃げて行った男の子は、トシだったね」


伶香が小さな声でそう言った。
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