溶ける部屋
部屋の前まで来ると2人の声は一層大きくなった。


「おい、何してんだよ!!」


健が声を上げながらドアを開けた。


ドアの向こう側でか絡み合う2人の姿。


その体はすでに半分以上溶けていて、ドロリとした液体が床に散らばっている。


「2人ともやめろ!!」


弘明の声も届かない様子で2人は行為を続ける。


この部屋に入るとすべての欲望が最高潮に達する。


2人はそれを利用しているのだ。


もう出られない、どうせ死ぬ。


その思いが2人をこんな行動にうつさせたんだ。


そうしている間にも、伶香の鼻が溶けて消えた。


弘明の足がグズグズになり、骨が見え始める。


一体何時間この部屋に入っていたのだろうか。


「……健、行こう」


あたしは健の腕を掴んで引っ張った。


「でも……!」


「2人はわかっててこの部屋に入ったんだよ」


2人は死ぬ覚悟だった。


「明日花……」


あたしは悲しい気持ちを押し込めて、健と2人で部屋を出たのだった。
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