溶ける部屋
死んでも生き続ける人間は、心の中にその存在が残っているからだ。


忘れられてしまったら、もう生き続ける事も出来ない。


「……どうして、俺たちの事を助けたんですか?」


「君たちはマミの友達だ。そうだろ?」


躊躇なくそういうお父さんにあたしは戸惑った。


マミちゃんがいじめられているのを見て見ぬふりをしていたのに、そんな風に思ってくれていたなんて思っていなかった。


「少しでも話しかけて、遊んでくれて、本当にありがとう」


お父さんはそう言い深く深く頭を下げたのだ。


「そんなっ……!」


あたしは慌てて左右に首を振った。


お礼を言われるような事なんてしていない。


それなのに……。


「そろそろ行くぞ」


そんな声が聞こえてきて振り向くと、ヘリの運転席に男が座っているのが見えた。


操縦士みたいだ。
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