溶ける部屋
繋がらない
電話があると言う事で気分が軽くなったあたしたちは、帰りの道を賑やかに歩いていた。


こんな状況でも同年代と言う事で、聞いている音楽が見ているテレビの話題に花が咲いた。


建物に戻った時にはすでに太陽は傾き始めていた。


「あぁ、喉が渇いた!」


建物に入ってすぐ、伶香がそう言って冷蔵庫へと走った。


「俺の分も頼む」


弘明がそう言い、ドカッと椅子に座る。


伶香が人数分の麦茶を準備してくれているのを見ながら、あたしは電話を取った。


受話器を耳に当ててみる。


普通は聞こえて来るはずのツーッツーッという機械音が聞こえてこない。


「あれ?」


首を傾げ、受話器を置く。


そしてまた手に取った。


やっぱりさっきと同じ、機械音は聞こえてこなかった。


不思議に感じながらも、自宅の電話番号を押してみる事にした。


家に誰かいればいいけれど。


共働きの両親の事を思い出しながら番号を押す。


しかし、呼び出し音は聞こえてこないのだ。


おかしいな。


そう思い、またかけなおす。


しかし結果は同じだった。
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