溶ける部屋
その時だった。


小道の方から人影が見えて、あたしたち人は視線を向けた。


「おーい! こっちに建物があったぞ!」


そう声をかけて来たのは、同年代くらいの男の子だった。


顔は見たことがないけれど、小柄な子だ。


「今行く!」


健がそう返事をしてあたしの手を握る。


「歩けるか?」


「う、うん……。あの人は誰? 健の友達?」


3人で歩き出しながらあたしはそう聞いた。


「いや違う。あの人も俺たちと同じようにここで目が覚めたんだ。他にもあと2人いる」


「どういう事?」


「わからない。あたしたち全員目が覚めたら森の中にいたんだから」


あたしの質問に少しだけイラついたように郁美が言った。


あたしたち全員森の中に?


ますます混乱する中小道を歩くと、すぐ近くに真四角の白い建物が現れた。


森の中にたたずむその建物は少しだけ威圧感があった。
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