溶ける部屋
「もう1つ、屋上に気になる事がある」


トシが言う。


「なんだよ?」


弘明が聞いた。


「小道の途中には大きな沼があった。車が通れるとは思えない。俺たちがここへ運ばれて来たとしてたら、ヘリコプターで屋上に運ばれたんじゃないかなって、考えたんだ」


建物はとても大きい。


ヘリコプターが止まるくらいのスペースはありそうだ。


「すげぇな、お前」


弘明が感心したようにそう言った。


「ヘリだとすれば、一度に全員は運べない。数回に分けてあたし達を運んだってことね」


あたしもトシの考えに関心しながらそう言った。


「そういう事。そんなふうに手間暇をかけて移動させたのなら、俺たちは無差別に選ばれたわけじゃないって思ったんだ」


「そっか、だから昨日共通点を探したんだね」


伶香が言う。


だけど共通点はなかった。


もしかしたら、自分たちが思いつかないような共通点があるのかもしれないけれど。


「ヘリで来たとしたら、屋上になにかヒントが残ってるかもしれないな」


健がそう言い、屋上を見上げた。


「あぁ。でも梯子がない」


「だけど俺たちを森へ運んだのならどこかに階段はあるはずだ」


健が言う。
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