溶ける部屋
「なんでそんなこと……!!」


伶香の体を強く抱きしめてトシを睨み付けた。


「俺はただ、階段を探してただけなんだ!!」


途端に、トシが叫んだ。


頭をかかえ苦痛に耐えるように顔をしかめている。


「それがどうして伶香を襲う理由になるんだよ!」


弘明が椅子を蹴とばして立ち上がる。


「やめろ。事情を聞こう」


健がどうにか弘明を止めてそう言った。


「あの部屋にいると、自分の気持ちが落ち着いてきて、なんだかすごく懐かしい気持ちになって……出たくないなって、思ったんだ」


震える声でトシは言う。


「だけど同時に、自分の欲望や黒い感情も徐々に大きくなっていくように感じて……これはヤバイかもしれないと思って部屋を出たんだ。



そしたら目の前に伶香がいて、自分の中の感情が抑えきれなくなって……」


「なに調子いい事言ってんだよ!!」


弘明が怒鳴る。


トシの言っている事は支離滅裂だ。


あの部屋に入ったら伶香を襲ったのだと言っている。


そんなでたらめが通るワケがなかった。
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