溶ける部屋
みんな、あたしが目覚める前に確認済みだったようだ。


「建物の中に入るのか?」


健が誰ともなく聞く。


「日が暮れているし、とにかく安全な場所にいた方がいいと思う」


女の子が返事をした。


あたしや郁美と違い、見た目が派手な子だ。


髪の毛の色なんて部分的にピンク色になっている。


普通に生活をしていたら、絶対に関わり合うことのないタイプかもしれない。


「そうしよう」


小柄な男の子がそう言い、ドアノブに手をかけた。


そもそもドアが開くのかどうかという心配があったけれど、そのドアはすんなりと開いた。


「開いたな……」


健が少し驚いたようにそう言った。


「中に人がいるのかも。声をかけた方がいいよ」


郁美がそう言うと、男の子が「すみません! 誰かいますか!?」と、ドアの前で声を出した。
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