溶ける部屋
「健、もしかして体調が悪い?」


そう聞くと、健は左右に首をふった。


「いや……たぶん、あの部屋の影響だと思う。伶香も言ってたよな? この部屋に入るといつもと違う感じになるって」


「う、うん」


伶香は頷いた。


「きっと長時間部屋にいるともっと変化が出てくるんだと思う。手分けをして、少しずつ片づけをしていった方がいい」


「そんな事言って、トシを殺した証拠を隠滅するつもりじゃねぇだろうな」


弘明が健を睨み付けてそう言った。


「そう思うなら、一番最初にお前が行けばいい」


健はそう言い、伶香が持ってきたゴミ袋とゴム手袋を弘明に渡した。


弘明はそれを奪い取るようにして身に付ける。


「辛くなったらすぐに出て来い。長くても20分か30分。それ以上はダメだ」


「うるせーよ、殺人鬼」


弘明は健の言葉にそう返すと、部屋の中へと足を踏み入れたのだった……。
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