溶ける部屋
「朝ご飯食べる?」


伶香がそう聞くが、みんなそんなに食欲もないようで手を上げる人はいなかった。


代わりにお茶を入れ、また席に座った。


「そう言えば、椅子が空いてたよね」


あたしは使われていない2つの椅子を見てそう言った。


「あぁ。それがどうかしたか?」


弘明がそう聞いてくる。


「ううん、別に……」


そう言いながらも、ふと違和感が胸を付いた。


椅子の数は7脚。


部屋の数は8部屋。


ここに連れてこられた人間の数は6人。


どうしてこんなにバラバラなのだろうか?


仮にこの部屋を犯人が作ったとすれば、こんな風に少しずつズレている意味はなんなんだろう?


「どうしたんだよ、明日花」


健にそう言われて、あたしは戸惑いながらも口を開いた。


「椅子の数と部屋の数とここにいる人数がバラバラだなって思って。深い意味はなにもないのかもしれないけれど……」


そう言うと、みんなの視線が開いている椅子にうつった。、


1つはトシが使っていた椅子。


じゃぁ、もう1つは……?


「もしかして、俺たちだけじゃなかったってことか?」


そう言ったのは弘明だった。


「どういう意味?」


伶香が首を傾げてそう聞いた。
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