溶ける部屋
☆☆☆

結局、あたしたちはまた同じ広間へと移動して来ていた。


座ったまま眠ってしまったからか、ひどく体が疲れている。


あたしは冷蔵庫を開けて栄養ドリンクを一本取り出した。


ジュース感覚で飲める甘い飲料だ。


「飲む?」


誰ともなくそう聞くと、伶香が「飲む」と、反応した。


あたしは2つコップを用意して栄養ドリンクを2つにわけた。


同じ飲み物はまだ冷蔵庫に入っていたけれど、最小限にとどめた方がいいかもしれないと判断したのだ。


「こういうジュースって元気がでるね」


隣り合って座ると、伶香がそう言った。


「そうだね。甘くておいしい」


あたしは伶香の言葉に相槌を打った。


派手な伶香を一目見た時は仲良くなれなさそうだと感じていたけれど、今では打ち解けている事に気が付く。


伶香のようなタイプを少し勘違いしていたかもしれない。


今では仲が良かった郁美との関係の方が、あたしにとっては重たいものになってしまっていた。


郁美はみんなと一緒にいてもうつむいている時間が長くなり、会話にもあまり参加しなくなっていた。


そんな郁美を見ていても、あたしは何をしてあげればいいのかわからないままだった。


それに、あたしに心配されるのが今の郁美にとって一番嫌なことかもしれないと、思っていた。
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