溶ける部屋
あたしはジュースを飲みほして健を見た。


健は弘明と2人で番号について、ああでもない、こうでもないと会話を続けている。


健は郁美の気持ちには気が付いていないようだ。


「ごちそう様、おいしかった」


伶香がそう言い、コップを流し台へと持って行く。


あたしも同じように立ち上がった時、突然部屋に電話の音が鳴り響いた。


ジリリリリッと、警告音に似たその音にそれぞれの動きが止まる。


あたしは立ちあがった状態で電話に釘付けになっていた。


「犯人からの電話……だよね?」


コップを洗っていた伶香がそう言った。


「あぁ……」


健が頷く。


すると、弘明が席を立って電話の前まで大股で移動した。


「俺が出る」


そう言い、躊躇することなく受話器を手に取った。


「もしもし?」


弘明が向こう側の人間に話しかける。


《いくら考えても思い出さないのなら、本能の部屋を使え》


機械音が響き渡り、あたしはビクッと体を震わせた。


手に持ったコップを危うく落としそうだった。
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