溶ける部屋
「はぁ!? お前誰だよ! ここから出せクソが!!!」


弘明が受話器へ向かって怒鳴り散らす。


しかし相手は何も言わずそのまま電話を切ってしまった。


「なんだよ、バカにしやがって!!!」


弘明が力任せに受話器を置いて、ガンッ!と音を立てた。


相当腹が立っているみたいだ。


あたしも同じ気持ちだったけれど、ムシャクシャしていても仕方がない。


電話の相手はあたしたちにヒントをくれたのだから、それについてちゃんと話し合いをしなきゃいけない。


「《本能の部屋》って、なに?」


そう言ったのはうつむいていた郁美だった。


さすがに今の電話で驚いて顔を上げている。


「そんなの、突き当りの部屋に決まってんじゃん」


答えたのは伶香だった。


あたしも伶香の言う通りだと思っていた。


「またあの部屋に入れってことか!?」


弘明がそう言い、包帯が巻かれている耳に手を当てた。


「無理だよ、あんな、体が溶ける部屋に入るなんて……」


あたしは震える声でそう言った。


「だけど、入れば何かがわかるんだろ」


弘明が言う。


「それかもしれないけれど、でも……」


「今日はやめておこう。だけど、今日の内にどうするかをよくきめて、明日必ず実行する。それでどうだ?」


健がそう言い、みんなをぐるりと見回した。
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