天国の不動産
しかし、彼女にとっても僕は救いであり、逃げであった。
振り向き、無言で彼女からの続きを待つ。
「……生者に会いに行くのですか?」
恐る恐る聞く彼女に、僕は口を紡いだ。
まだ決められていないこと。
返事ができないこと。
彼女はそれを察して聞いていた。
「わからない……です」
しどろもどろな返事。
彼女にとっても分かっていたわからない返事だった。
「自分が今死んでいることすら理解できていないのに、本当の意味で死ぬということなんて……」
全く理解ができない。
言葉を消した。