天国の不動産
午後15時。
葵のアルバイトも上がりの時間。
この後は月に1回のクリニック通院。
帰ると葵の母が準備をして待っていた。
「おかえり葵。お仕事お疲れ様」
葵の母親は未だに葵を腫れ物扱いしている。
「ただいま。今日ね、バイト先の大学生の男の子がね」
葵が間髪入れずに話し出す。
驚いた顔をする母に違和感を覚えた葵は、すぐに話すのをやめた。
「め、珍しいわね。葵が他の男の子の話をするなんて…」
「そう…だっけ」
なんとも言い難い、おさまりの悪い空気が流れる。
「帰って早々だけど、今日クリニックだよ。行こうか…」