天国の不動産
僕の、せいだ。
待合室でまだ目を泳がせながら、不安げな顔をしている葵が、診察室へ呼ばれた。
「鹿島葵さん、通院を始めたのはいつぐらいからか覚えていますか?」
「えっと…いつだったっけ。4年くらい前?」
「どうして通院を始めたか分かりますか?」
「どうしてだっけ…でも今まで何の疑いもなく来ていた気がする。今日突然どうしてだっけって思って…」
母が不安な表情を更に悪化させ、担当医を見る。
「葵さん、逢坂湊さんを、ご存知ですか?」
ごくりと息を呑んだ。
僕を含め、そこにいた3人が一気に緊張する。
「逢坂…湊…」