天国の不動産
黄
午後19時。
いつの間にかそこは見慣れた天国だった。
葵は元気で、訳もわからず病院に連れてこられ、訳のわからない質問をたくさんされては困った顔で「分かりません」と答えていた。
天国では不動産の山下が僕のことを待っていた。
山下は誰の記憶が消えたのか、パソコンで検索しているようだったが、言われなくても、僕には分かる。
「すっきりしたはずなのに、すごく悲しい顔をしていますよ」
「そんなはずは…」
僕は本来の目的を果たしたのだ。
葵も4年前、僕と一緒に過ごしていた時と同じ、元気な顔をしていた。
これで良かったはずなのだ。
なのになぜ僕が今にも雨が降りそうな、曇った顔をしているのだ。
「それで良いんですよ。誰かに忘れられるって、悲しいことですから、逢坂さんの感情は正解です」
何も言えなかった。