天国の不動産




「人間の生活に疲れた方とかはお花を希望される方もいらっしゃいますよ。花粉症だった方が面白がってお花を選択していた方もいましたね」




山下なりのジョークなのだろうか…





カタログはまるで生き物図鑑のようで、どれもピンと来なかった。





「僕は…」





きっと僕は、思っていたよりも人が好きで、自分も誰かに好かれていたくて、それをどうにか実感したくて、特別なんていらない。




「僕は、どんな形でも良いので、大切な誰かに愛されたいです」





また、下を向いてしまったけど、気づいて意識的に顔を上げた。





いつの間にかそれが出来るようになっていた。






「愛されない魂はありません。人も、動物も、魚も、虫も。愛されるための魂ですから。それを一番肌で感じられるのは、言葉を持った()だとは思います」





「どうされますか?」と山下がにっこりと笑う。




< 110 / 114 >

この作品をシェア

pagetop