天国の不動産
“記憶は誰かに話すことによって保たれる”
いつか山下はそう言っていた。
赤子は話すことができない。
誰かに伝えなければいずれ忘れてしまう。
だけど、今回の天国の仕組みのように、突然全く消えてしまうわけではない。
どこかの片隅に、小さく小さく残ることを祈りながら、生まれ変わりの門を前にした。
振り返ると、居心地の良かった大草原の奥に天国の不動産が小さくが見えた。
次来る時は、自信のない丸まった背中ではなく、誰かを愛して愛され、胸を張れるように。
年老いて、笑顔で来れるように。
そう願って、門をくぐった。
完_________